自然に寄りそう/13
集まって住むことの面白さを



 3年前に賃貸の集合住宅=写真=を設計したことがあります。場所は兵庫県芦屋市です。阪神電車の芦屋駅の近くで、通勤通学や日常生活上非常に利便性の高い所です。

 敷地の広さは約230平方メートルで、以前は賃貸のタウンハウス(連続住宅)が4戸建っていました。95年の震災の時、周辺はかなりひどく倒壊したことを受け、区画整理の一環として建て替えが決まりました。

 この集合住宅を設計していく上で、私にとって大きな力になったのは地元に暮らし、商売をされていた不動産コンサルタントの存在でした。彼は地元の街づくりに積極的でいろんな活動をされていました。

 その彼が今回の建築主から運営管理を依頼されていましたので、どのような賃貸集合住宅にしていくか何回も打ち合わせしながら設計を進めていきました。

 当初、建築主からは1階を店舗、2〜4階を住宅として貸し、最上階は自分たちの住戸としたいという意向を聞きました。周辺は2階建ての住宅や、5〜6階建ての集合住宅、店舗が混在しており、統一感のある街並みではありませんが、混在しているおもしろさ、楽しさといった雰囲気があります。

 そこで1階に建築主自らも店を出し、にぎわいを作り出そうということになりました。一方で、周辺に2階建ての住宅があることを考慮し、法的には5階建ても可能でしたが、最終的には4階建てに落ち着きました。そして、建築主の住戸は2階部分に配置し、3、4階をメゾネット(二層)型の賃貸住戸としたのです。

 最上階のペントハウスに建築主が住むのが一般的かと思いますが、この場合は事業収入なども考え、建築主が住みたいと思うところを借り手に住んでもらうことにしたのです。

 また一般的に集合住宅は隣同士で壁を共用しているのに対し、3戸設けたこのメゾネットではそれぞれを独立させ、隣同士で壁を共有しないようにしました。このことは風通しや採光に配慮しているだけでなく、それぞれが個別の屋根を持つことで戸建ての住宅の大きさに見えるようにし、できるだけボリューム感を抑えることができました。

 2階建てが主であった町家に対し、現在の集合住宅の階数は比べようもなく大きくなっています。住まいとしてどう評価していいのか難しい問題なのですが、同じ住戸のプランをただ積み上げていくだけでは楽しくない空間になってしまうのも事実です。集まって住むことの面白さをこれからも考えていこうと思います。

=建築家、中北幸                      関連作品へ

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