自然に寄りそう/14
水は人と自然をつなぐ糸
今回は具体的な住まいの話を少し離れ、環境学習についてお話します。環境学習というと、子どもの夏休みの自由研究をイメージする方もおられるかもしれませんが、住まいと自然とのつながりを考える上で重要です。
私が環境学習にかかわったきっかけは、95年の震災でした。当時、全国から多くの人たちがさまざまな形でボランティア活動に参加しました。私も建物の損傷や耐震性の診断などにかかわる機会がありました。
しかし、自宅が全壊し、当時14歳の長女を失った私にとって、家族と自分のことで精いっぱいで、残念ながらボランティア活動は十分にできませんでした。その後、私なりにどのような形でボランティアをできるか考えていたところ、子どもの環境学習をサポートする指導者養成のワークショップを知りました。
私の住む兵庫県西宮市は92年から「地球ウォッチングクラブ」(EWC)事業としてボランティアの助けを借りながら、子どもたちの環境学習活動を広め、環境省が95年から取り組む「こどもエコクラブ」のモデルにもなりました。そのEWC事業の一つであったワークショップに、私も参加したのです。
ワークショップは96年9月から3カ月に計16回、自分たちの住む街の特性と環境問題の接点を探りながら環境学習プログラムを作成、実践しました。そして震災から丸2年の97年1月17日に行われた最終回では、自然がもたらす災害や恵みを考えながら終了しました。
プログラムのテーマは「水と人のつながり」。市内には六甲山系から流れる夙川(しゅくがわ)があり、その流れに沿って美しい松と桜並木が続きます=写真。夙川が注ぎ込む海辺は、かつてイワシやタイなどの漁業が盛んで、海水浴場としてもにぎわっていました。そして夙川の伏流水が「宮水」と呼ばれ、古くから酒蔵の街・西宮としての発展を支えてきました。
このように多様な水環境を有す地元をめぐりながら、単なる自然観察だけではなく、その街の文化・歴史などの魅力ある特性を組み込み、水を自然と人をつなぐ糸として見ていく内容でした。
少し地元自慢のような話になってしまいましたが、住まいにとって自然がもたらす恵みや脅威とどのように接していくのかを考え、地域とのつながりに目を向けながら環境学習していくことの大切さを教えられたように思います。
=建築家、中北幸