自然に寄りそう/11
調湿性のある材料で結露防止



 今回は集合住宅内の住まいの内装についての改修を紹介します。

 約9年前の神戸市内の例ですが、当時で築20年以上たっていた鉄筋コンクリート造りの4階建ての集合住宅でした。住戸の床面積は93平方メートルの4LDKという間取りです。

 建築主にとって改修に際しての要望は、大きく分けて三つありました。一つ目は子供たちが独立したので夫婦2人の生活にあった間取りに変更すること。二つ目は台所まわりを新しくすること。三つ目は結露がひどくかびくさいのを何とか改善できないかということでした。

 一つ目と二つ目の要望については、ほかの改修でもよくある話です。建築主との打ち合わせ段階からその改修のイメージを図面や参考となる写真などで共有し、改善後の姿も互いに満足できる形にすることが可能です。ところが、三つ目の結露という話になるとなかなかそういうわけにはいきません。建築主にとって改修後の姿がイメージしにくい事柄だと思います。

 最も結露のことは集合住宅に限った話ではありません。日本のような湿度の高い風土の中ではどんな建物も例外ではありません。ただ一戸建てに比べると、現在の集合住宅は窓が少ないうえ、できるだけ部屋数をとろうとして、小さな部屋に間仕切ってしまいがちです。

 このため、気密性が高く、風通しが悪くなり、結露を起こしやすい要因の一つになっていると思います。今回の例では窓を増やすことは不可能でした。でも、夫婦2人の生活に合わせ、四つあった個室を二つにし、居間を広げオープンな間取りにしていく方向でしたので、風通しを改善することは可能でした。

 さらに最も重要なのは、どんな内装材を使うかということです。簡単に言うと、室内空気の湿気を調節するうえで効果的な調湿性のある材料を床、壁、天井に使用していくということです。

 今回は湿気の発生が多い洗面所や台所の間仕切り壁に工夫しました。無垢(むく)の9センチ角の木の柱を、4・5センチの隙間(すきま)をあけながら配置。これは適度に視線を遮りながら風通しを良くし光をとり入れるためでもあるのですが、木の柱が湿気を吸い込んだり、はき出したりすることがポイントです。

 木材をたくさん使った室内の湿気は温度の上下にかかわりなくほぼ一定に保たれることが確かめられています。校倉(あぜくら)造りで有名な正倉院がその実例といえます。校倉造りといかないまでも木材などの調湿性のある材料をたくさん使うことが結露には効果的であるといえます。

=建築家、中北幸

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